「ミジンコはすごい!」(花里孝幸)

「ミジンコはすごい!」はすごい!

「ミジンコはすごい!」(花里孝幸)
 岩波ジュニア新書

中学生に理科を教えていて
気になることがあります。
それは子どもたちの多くが
「ミジンコ」に対して大きな誤解を
持っているということです。
子どもたちは
どんな誤解をしているのか?

まずサイズの問題です。
ミジンコは肉眼で確認できるほど
大きいということを知らないのです。
問題集などでは
ミカヅキモやアメーバと同じ大きさで
並んで登場することが多いため、
ミジンコはものすごく小さな生物だと
勘違いしているのです。
これは教科書や副教材にも
責任があります。

次に位置付けです。
子どもたちはミジンコが
アメーバ並みの
下等動物と思っています。
実際は「甲殻類」です。
カニやエビの仲間と知ると、
一様に驚くのです。
「高級食材と同じ仲間!」。
生物の分類は食材の価値とは
関係がないのですが。

最後に、眼についてです。
これは大人でも
分かっていない人が
多いと思うのですが、
ミジンコの眼は1つなのです。
実は教科書や副教材の
どの写真を見ても側面からのもの
(つまり横顔)しかないためなのです。
正面や上からの写真を見せれば
やはりみんな驚きます。
「ミジンコは一つ目小僧だ!」

そんな誤解が生じるのは
お前の教え方に
問題があるからだろうって…。
いや、まあ、その通りなのですけど…。
前置きが長くなりましたが、
そうした誤解が
今後二度と起こらなくなるであろう
素晴らしい本があるのです。
本書はその名も「ミジンコはすごい!」

表紙からして素晴らしいのです。
美しいミジンコの写真が3点。
そのうちの一つは上から写した
「一つ目小僧」であることがわかる
アングルです。

読んでみると、
ミジンコにはまだまだ
私の知らない特性がありました。
「ミジンコは周囲に外敵がいる場合、
頭をとんがらせる」
「それも外敵の放出する
化学物質を検出して」。
それ以上に驚いたのが、
「ミジンコは脱皮する」。
そうか、甲殻類ということは
そういうことなんだ!
新たな発見がたくさんありました。

本書の素晴らしさは、
単に「ミジンコ入門」にとどまらず、
ミジンコの食物連鎖上の
位置付けを明らかにし、
複雑な湖沼生態系の
環境研究まで論じている点です。
それも研究成果を披露するのではなく、
「こういう視点でこのように調べると、
こんなことがわかります」という、
科学的探究および
科学的思考のしかたについて
明確に説明されているのです。

中学生に、高校生に、
そして少年の心を持ち続けている
大人の皆さんに薦めたい一冊です。

(2020.4.13)

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